化学療法を受けている患者の悪心・嘔吐のアセスメントとして、使用される抗癌剤の特徴を理解したうえで、治療前の患者の不安の程度や治療に対する患者の受容の程度、患者の体質、前回 の化学療法時の状態を情報収集し、アセスメントする。 不安が強い患者は悪心・嘔吐も強い傾向にあり、できるだけ不安が軽減できるよう援肋することが大切である。 不安の強い患者は、予測性の悪心も起きやすいため、患者の感情を受け止め、不安の原因を探り、不安軽減に努めていく必要がある。また、悪心・嘔吐のことをあまり考えなくていいように、何 かに集中できることなどを見つけるのもよい。必要であれば、事前に精神安定剤を投与することも考慮する。
悪心・嘔吐の有無や出現状況(時間・回数・程度など)を情報収集し、患者の顔色や表情の観察を行い、倦怠感や疲労感、不快感など苦痛状況の程度をアセスメントする。
悪心・嘔吐と同時に倦怠感が出現するため、患者はベッド上で臥床していることが多く、観察しにくい場合があるがしっかりアセスメントを行い、苦痛の緩和に努める。悪心・嘔吐に伴う随伴症状(食欲不振、脱水、頻脈、発熱、□内炎、下痢、使秘、不眠など)の観察を行う。 食事についは、少量ずつ摂取できるときに摂ることが基本である。無理に食べず空腹を感じたら食べるよう心がける。
食事で特に気をつけたいことは、臭いと温度である。 特に温度が高いとにおいもきつくなるため、室温程度に冷やしてから配膳する。悪心・嘔吐により電解質や水分が失われ脱水状態となる。脱水症状として脱力感、倦怠感、□の渇き、皮膚の乾燥、尿量の減少、体重の減少などがある。 そのため、電解質バランスの保持や十分な水分摂取を促すことが重要となる。なお、吐物や胃液などにより□腔内の不快が生じるため、含嗽ができるよう準備をしておく。 吐物の誤飲による肺炎や、窒息にも注意が必要である。
悪心・嘔吐の二次的障害として、腎障害、神経障害、骨髄障害などが考えられるため、検査データを確認する。 特に、シスプラチンは腎機能の低下を起こしやすいために、使用するときは、尿量に注意し、浮腫 などの観察、排泄物の性状や量のチェックも必要である。
患者の意向を尊重しながら、倦怠感や疲労感、不快感などの軽減に努め、患者を精神的に支える姿勢で接することが重要となる。
食事について
化学療法中であっても、食事はバランスよく摂取したほうが体力の保持や感染予防の面からもよい。しかし、悪心・嘔吐により、食事が思うように摂れないときには、無理をせず、自分の嗜好に合わせて食べられるだけ摂取することが基本となる。 水分は、できる限り多く摂取するよう心がける。食事時間に水分を多く摂取すると満腹になりやすいため、できれば食間に水分摂取するよう指導する。
消化器官の停滞時間が短く、刺激が少なく、消化が良いものを選ぶ。お粥、うどん、餅、パン、ビスケット、半熟卵、プリン、ヨーグルトなど。また、体内の細胞の浸透圧に関与しているカリウムとナトリウムの電解質バランスを保持する必要がある。 ナトリウムイオンは筋肉や神経組織の興奮を抑制し、塩素イオンは促進する作用があるため、神経障害を起こしやすい。 電解質のうち、ナトリウム、塩素を多く含む食べ物には潰け物、ラーメンなど味つけが濃いもの、カリウムを多く含む食べ物にはリンゴ、バナナ、干しぶどう、ほうれん草などがある。 そのほかに食べやすい食品として、アイスクリームやフルーツゼリー、酢の物などがある。
避けたほうがよい食品として、 脂の濃いものは胃液の分泌が減少し、蠕動運動も弱くなり、消化されにくいため、避けるよう指導する。 その他、刺激の強いものや甘いものも避けるよう指導する。 嘔吐のある場合は無理はせず、様子をみながら電解質バランス飲料、栄養バランス飲料、ジュースなどで水分をできるだけ摂るよう指導する。
※食事の工夫
@食べやすいように流動的な食べ物を勧める。ミキサーを利用した果物や野菜ジ ュース、すりおろしたリンゴなど
A食欲をそそるようにゆず、しそ、レモンなど、ほのかな香りの利用を勧める
B寿司飯にしたり、一ロ大のおにぎりにすることを勧める
日常生活について
部屋は清潔の保持に努め、環境整備に心がけることが必要である。ペッドサイドにはガーグルペースンを置いておく。 吐物があれば速やかに片づけ、汚染した寝衣、寝具などは清潔なものと交換する。
嘔吐後、□腔内の臭いによりさらに嘔吐を誘発するため、うがいができるよう冷水やレモン水などを準備しておくのもよい。 また、爽快感が得られるアルコール綿なども有効とされる。 室内の空気を入れ換え、頻繁に換気を行う。 患者の状態によっては、誤嚥による窒息や誤嚥性肺炎を防止するために、体位は坐位または側臥位とする。 呼吸は深呼吸をして緊張を和らげることを心がけるよう指導する。また、急激な動きは嘔吐を誘発するため、ゆっくりした動きをするよう指導する。
精神面について
精神的な側面から影響することも多いため、できる限り自然体の保持に努めることが大切である。そのためにはあまり緊張せず、リラックスし、不安や疑問があれば医療スタッフや家族に話をして、問題を解決するよう指導する。
医師や看護婦に相談すること
@悪心・嘔吐が続き、24時間まったく摂取できなった場合
A尿量が減少した場合(通常1〜1.5//日の尿量が300〜500m//日以下に減少した場 合)
B頭部、類部、四肢の痙撃が生じた場合
C血尿
D発熱(37.8°C以上)
E吐物に血液が混じっている場合