化学療法が安全に実施されるためには、いくつかの注意すべき点がある。そのなかの 一つに、抗癌剤による血管外漏出の問題がある。抗癌剤の血管外漏出は、一般の薬液漏出とは異なり、重篤な皮膚障害を来すため、心身共に患者に与える影響は大きい。 抗癌剤が少量漏出した場合、その直後は症状が出現しないことが多い。数時間から数日後に起こる発赤・腫脹、疼痛出現時には水庖形成・潰傷にまで至ることがある。 治療を終え帰宅後に症状が出現する可能性があることを患者へ指導し、異常がみられた場合の受診の説明をしておく。
【血管外漏出時の対応・処置】
@抗癌剤を中止し、約3〜5ml血液を吸引し、抜針する。
A漏出した抗癌剤の種類・濃度・量を確認する。
特に、壊死性抗癌剤・炎症性抗癌剤は漏出が少ない場合でも漏出した時点で医師によりステロイド剤の局所皮下注が行われる。B局注後、漏出部位に外用ステロイド軟膏を塗布し0.1%アクリノール液による湿布を行う。
C患部を24〜48時問挙上し、安静にする。
D遅発性の漏出反応を早期発見するため、5〜7日問は漏出部位を頻回にチェックする。
E高度の漏出の際、皮膚症状が改善しない場合は、早期に皮膚科医師に診察を依頼する。
F発生時、今後起こり得る局所の変化、治療法、治癒までの期間について説明し、患者の不安の除去に努める。
血管外漏出を防ぐための看護のポイント(末梢静脈点滴時の薬液の血管外漏出を防ぐための看護のポイント)
<血管確保前>
1)アセスメント
血管外漏出を起こしやすい要因はないかアセスメントする
2)皮膚障害を起こしやすい抗癌剤の把握
抗癌剤の種類・濃度・漏出量によって皮膚障害の程度は異なるため、抗癌剤の種類についてを把握しておく必要がある。
3)患者指導
抗癌剤滴下中の穿剌部位の安静、異常の早期発見に協力してもらうことを説明。
4)投与方法の選択
頻回に血管外漏出がみられる場合や、抗癌剤の長時間の投与、繰り返しの化学療法が必要な場合は、 中心静脈カテーテル、ポート留置の考慮。
5)安静への配慮
抗癌剤投与中は極力動かないで済むよう、点滴剌人前にトイレに行ってもらう。 また、必要なものは手の届くところに置く。
<血管確保時>
1)血管確保時の薬剤
点滴剌入時には、直接抗癌剤を使用しない。 生理食塩液などで漏出しないことが確認されてから、抗癌剤投与を開始する。
2)刺入部位の配慮
利き手は避け、同一の血管に何回も穿刺しない。 何度も穿刺する場合は四肢の遠位から開始し、2回目以降は近位方向に行う。
(3)固定方法
剌人部位の周辺の状態が見えるよう確実に固定する。<血管確保後>
1)血液逆流の確認
血液逆流を認めない場合には、血管外漏出の可能性が考えられるため、速やかに 点滴ルートの再確保を行う。
2)刺入部位の観察
発赤・腫脹・疼痛・硬結がないか観察する。 壊死性、炎症性抗癌剤は軽度の発赤でも中止する。 漏出が不明確でもその可能性がある場合は速やかに中止する
3)滴下速度の確認
抗癌剤ルートの部位によっては、体動により滴下速度が変化することもあるため 経時的に観察する。
4)安静の確認
患者の安静が保たれているかを確認する